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Canon BJ S600 購入体験記

コトの経緯(読み飛ばしていただいて構いません)

私は先日、PowerMacG4 450 Dual(Gigabit) にMacOSXを導入して、しばらく使っていたのですが、問題があった。実は、保有しているプリンタが以前のマシンと一緒に購入したEPSONのPM-600Cというカラーインクジェットプリンタと、譲り受けたOKIのMicroline8wというモノクロレーザーで、いずれもPowerMacG4にはSTEALTHというシリアルポート増設カードを通して接続しており、MacOSXでは使えないことが確実視されていたのだ。

しばらくは、MacOSXで作業している時に印刷する必要が生じると、いちいちMacOS9で再起動していたが、それも非効率ということで

新型プリンタ導入

と、あいなった。実は、ヒラギノフォントを印刷したいからという気持ちも多分にあった(笑)。色々迷ったのだが、今回はCanonのBJ S600という機種にした。スピードと、コストパフォーマンスがウリのプリンタである。カタログスペックはモノクロで15枚/分という尋常でない値。実測でどれくらいでるか、わくわくして秋葉原の某店で購入。USBケーブル付きで21800円(税抜)だった。

ところで、プリンタ購入に当たっていろいろ調べていたときに、困ったことがあった。それは、インクジェットプリンタの場合、特に、カタログスペック上の速度がどの程度反映されているか分からないとか、web上や雑誌のレビューはWindows環境でのデータ/感想しかないこととかである。

そこで、購入した暁にはMac環境で実際に使った結果をWeb pageにまとめよう、と決心したのだった。ついでに、既に持っている8wとPM-600Cとの比較も行うことにした。更に、pdfとの親和性がアップしたと宣伝されるMacOSX上で、印刷の速度はあがるのだろうか、ということもテストした。

どのような環境で速度を測ったのか、また注目点

というわけで家にプリンタを持ち帰った僕は、早速接続し、プリンタベンチマーク計画(笑)を発動させたのだった。というわけで、私のマシン環境を簡単に書いておこうと思う。

これくらい書けば十分だろうか?そして、このベンチマークの狙っているところは、以下のような点である。

どのようなデータで速度を測るか

速度を測るにあたり、データをどのようにとるか考えてみた結果、

  1. AppleWorks6で作成されたモノクロ書類(A4で10ページ) as モノクロ印刷テスト用
  2. Appleのweb siteで配っているpdf書類のうちのpp.15-18 as pdfテスト用 on AcrobatReader5.0
  3. Microsoft Excel 2001 で作成されたカラーグラフ(「シェア変動」) as ビジネスカラー印刷テスト用(これのみMacOS9のみでの測定)
  4. OLYMPUSのweb siteに掲載されていた1600×1200の解像度のフルカラー写真サンプル画像 as フルカラー印刷用 on GraphicConverter

くらいが適切なんじゃないかと思ったので、この線でいくことにした。また、印刷モードもレーザプリンタである8w以外は各種ある。具体的には、

そこで、以下のように設定した。

印刷物と各種設定
プリンタ 印刷物 用紙 モード
BJ S600 i 普通紙 文書
ii 普通紙 文書
iii 普通紙 グラフィックス
iv 高品位専用紙 写真
PM-600C i 普通紙 速い
ii 普通紙 速い
iii 普通紙 きれい
iv スーパーファイン専用紙 きれい

実験結果

では、さっくり測定結果を示そうと思う。MacOSXでのデータはPrintCenterソフトが既に起動した状態で測定をしていることにご注意。

印刷にかかった時間
印刷物 プリンタ 給紙動作開始(秒) 印刷完了(秒) 給紙開始後の印刷速度(秒/枚) スループット(枚/分)
i PM-600C 23 527 50.4 1.2
8w 40* 124 8.4 7.1
BJ S600 11 220 20.9 2.9
BJ S600(MacOS X) 6 212 20.6 2.9
ii PM-600C 11 282 67.8 0.88
8w 18 65 11.8 5.08
BJ S600 24 134 27.5 2.18
BJ S600(MacOS X) 26 226 50 1.13
iii PM-600C 12 215 203 0.30
8w 10 22 12 5.00
BJ S600 15 90 75 0.80
iv PM-600C 10 381 371 0.16
8w 15 28 13 4.62
BJ S600 21 134 113 0.53
BJ S600(MacOS X) 15 129 114 0.53

(*)その日の最初の印刷だったため、ウォームアップ時間が含まれている。

考察

さて、まず結果を見ての当たり前の結論だが

レーザはどんな場合でもコンスタントに速い

ということである。特に、インクジェットプリンタは印字面積が広がるとそれに従って1枚にかかる印字時間が増えていくが、レーザプリンタはそのようなことがほとんどなく、印刷物によるスプーリングの時間の差が速度の差に出ている。

次に、PM-600CとBJ S600のについでだが、それについて書く前に、

PM600Cは3年前のローエンド、BJ S600は2001年時点での準ハイエンドである

ということは十分に留意しておいて頂きたい。その上でかくと、

確かにBJ S600は速い

といえる。ただし、明らかに15ppmは端から見ていて実現不可能な速度である。他社との対抗上、数字を持ち出したのは明らかだが、ほとんど無意味であるということはある程度パソコンを使っている人なら分かるはず。ランニングコストの比較でも、画像一面が青空だとか、森林だとかいうような、明らかに使用するインクが偏っているデータを持ち出して、独立インクタンクの優位性を説いているのもナンセンスである。ここらへんは非常に大人げないというか、印象が悪い。まぁおそらく営業がやったことで、製品自体が悪いと言うことではないのだが。

また、これは実測できたわけではないのだが、ヘッドを分離した黒インクタンクは、定価1100円で、かなりの枚数が印刷できそうで、

モノクロを大量に印刷する人にうれしい

のも確かである。ただし、本当にモノクロ文書を大量に印刷する人は、レーザプリンタを買いましょう。レーザのモノクロはインクジェットプリンタになれた人にとっては驚異的としか思えません。

次に、カラー印刷についてはどうだろうか。私は専門家ではないのだが、いろいろ頑張って見比べた結果

似たようなものかな

と言う気がした。解像度的にはBJ S600の方がいいのだが、フォトインクがあるPM-600Cの方がなめらかな色を実現しているように見えた。逆に言うと、BJ S600と同じ世代でフォトインクを搭載した、現在のハイエンド機種である、

PM-920CとかBJ F870って凄そうだ

という安直な期待をしてしまう。さて、画質はこの程度にして、MacOS9上でのドライバの出来について考えてみた。結論として、一番Macらしいドライバは

Microline 8w

用のモノだった。唯一アピアランスマネージャを採用しているのが、8w用のドライバだったのである(EPSONの最近の機種はアピアランスマネージャ対応であったかもしれない)。OKI製のプリンタはコンシューマにとっては必ずしも存在感は大きくないが、MacOSXのレーザプリンタドライバを提供しているという点でも、現在の所、唯一のメーカーで、かなり素晴らしい。EPSONとCanonに関しては似たような感じで、とりあえず特筆すべきコトはない。

さて、今回のテストの最大の関心事、

BJ S600のMacOSX用ドライバってどうよ?

であるが、正直いってMacOS9用のモノより印象がよかった。1から作り直したからであろうか、アピアランスマネージャにもちゃんと対応しているし、つくりもいい。印字速度もMacOS9とほどんど遜色ない。さらに、英語版のソフトの上ではプリンタドライバが自動的に英語になるなど、MacOSXの多言語対応にもついていっている。

印刷時にCPU負荷が150%以上になった

点を除くと、MacOSXでよくこれだけきちんと動作するモノを作れたと関心さえしてしまう。なお、150%と、100%を越えるのはDualのなせる技である。逆にいうと、G4 Single 500MHz位だと本体の処理速度が印刷速度に追いつかない可能性はある(検証はしていません)。

ところで、最後に思い出したように書くが、実は印刷時のプリンタドライバの設定で「グレースケール印刷」をユーザが明示的に選ぶと、同じモノクロ文書でも速度がかなりアップする。テスト中ずっと

自動判別してくれるのかと思っていた

のだが、違ったようだ。やられた。というわけで、急遽追加でベンチマークをとった結果が、以下に掲載した。上の表とまとめてもよかったのだが、見にくくなるし、第一(効果の程はわからないが)PM-600Cにもモノクロオプションはある。まぁ実測してみないと、これだけの差が出るなんてわからない隠れ機能みたいなものということで、勘弁していただきたい。

印刷にかかった時間(BJ S600グレースケール追試)
印刷物 プリンタ 給紙動作開始(秒) 印刷完了(秒) 給紙開始後の印刷速度(秒/枚) スループット(枚/分) 速度変化(倍率)
i BJ S600 10 129 11.9 5.04 1.76
BJ S600(MacOS X) 8 150 14.2 4.2 1.45
ii BJ S600 22 132 27.5 2.2 1.00
BJ S600(MacOS X) 27 82 13.75 4.4 3.64

表中の速度変化については、「グレースケールON」の時の「OFF」に対する印刷速度の倍率を示している。

ii(pdf)のMacOSXが凄いことになっているが、絶対速度に注目して欲しい。pdfの印刷はMacOS9ではONでもOFFでも変わっていない。しかし、MacOSX上でOFFだとMacOS9に比べてかなり遅い。ところがONにすると一転して、AppleWorks書類の印字速度と殆ど同じになり、pdfの常識をうち破る結果(笑)が出ている。こうなった理由は正直よく分からない。しかし、総じて

BJ S600(グレースケール)恐るべし

な結果となっている。ところで、AppleWorksをグレースケールONでMacOSXで印刷していると、時々印字が止まって考え込む場面があった。マシン本体の速度や、MacOSX自体の速度が上がれば、さらに速度が上がる余地はあるといえそうだ。

感想・その他

テスト中や使用中に、以下のようなこと気づいたので、メモしておく。

テストデータ

測定に用いたAppleWorksとExcelデータ
測定に用いたpdfファイル(Appleサーバへのリンクです;測定時と同じファイルがずっとおかれているとは限りません)
測定に用いたJPEGファイル(OLYMPUSサーバへのリンクです;測定時と同じファイルがずっとおかれているとは限りません)

参考リンク

キヤノン販売/バブルジェットプリンタ
エプソン販売/インクジェットプリンタ
沖データ/レーザプリンタ
国民生活センターによるインクジェットプリンタの比較